許容応力度 - RC造
許容応力度とは、構造部材に生じる応力が材料強度に対して一定の値以下となるように割り引いた応力限度のことをいいます。この割引率を材料安全率といいます。コンクリートと鉄筋とで安全率は異なります。
許容応力度には、長期許容応力度と短期許容応力度があります。長期許容応力度は、クリープによって過大な変形が生じたり、常時に有害なひび割れが入ることを防ぐために安全率を大きくとっています。短期許容応力度は、鉄筋では基本的に降伏点強度をとり、コンクリートではばらつきを考慮した安全率となっています。
[目次]
コンクリートの許容応力度
コンクリートの許容応力度は、コンクリート設計基準強度Fcに安全率を乗じて算出します。コンクリート設計基準強度Fcについてはこちらで解説しています。コンクリート設計基準強度Fcについて
許容圧縮応力度の安全率は、長期で3、短期で1.5として定められています。許容せん断応力度は、長期では部材にせん断ひび割れが発生しないことを前提として、短期ではひび割れの発生は許容するが破壊しないことを前提として定められています。
コンクリートの許容付着応力度 \(\mathrm{[N/mm^{2}]}\)(RC規準)
種別 | 長期 | 短期 | ||
---|---|---|---|---|
圧縮 | せん断 | 圧縮 | せん断 | |
普通コンクリート | \(\frac{1}{3}F_{c}\) | \(\frac{1}{30}F_{c}\) かつ \((0.49+\frac{1}{100}F_{c})\)以下 | 長期の値の2倍 | 長期の値の1.5倍 |
軽量コンクリート | 普通コンクリートの0.9倍 |
鉄筋の許容応力度
鉄筋の長期許容応力度は、コンクリートの最大ひび割れ幅がおよそ0.3mm以下になるとともに、鉄筋の降伏点強度に対する安全率が一定になるように定められています。短期許容応力度は、鉄筋のJIS最小降伏点強度をとっています。
鉄筋の許容応力度 \(\mathrm{[N/mm^{2}]}\)(RC規準)
鉄筋の種類 | JIS規格 降伏点 | 長期 | 短期 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
引張・圧縮 | せん断 | 引張・圧縮 | せん断 | |||
異形 鉄筋 | SD295A,B SD345 SD390 SD490 |
295 345 390 490 |
195 215(195) 215(195) 215(195) |
195 195 195 195 |
295 345 390 490 |
295 345 390 490 |
丸鋼 | SR235 SR295 | 235 295 | 155 155 | 155 195 | 235 295 | 235 295 |
溶接金棒 | 295 | 195 | 195 | 295* | 295 |
():D29以上の太さの鉄筋に適用する。
*:スラブ筋として引張鉄筋に用いる場合に限る。
許容付着応力度
許容付着応力度とは、コンクリートと鉄筋が一体として力を伝達できる応力限度のことをいいます。付着が健全であればひび割れは分散し、部材の破壊は徐々に進行しますが、不健全な場合は応力の大きい箇所に引張破壊が集中し、無筋に近い破壊性上を示します。
上端筋は、施工時のコンクリートの沈下やブリーディングなどにより下端筋や縦筋に比べて付着強度が低下します。
鉄筋のコンクリートに対する許容付着応力度 \(\mathrm{[N/mm^{2}]}\)(RC規準)
鉄筋種類 | 長期 | 短期 | |
---|---|---|---|
上端筋*1 | その他の鉄筋 | ||
異形鉄筋*2 | \(\frac{1}{15}F_{c}\) かつ \((0.9+\frac{2}{75}F_{c})\)以下 | \(\frac{1}{10}F_{c}\) かつ \((1.35+\frac{1}{25}F_{c})\)以下 | 長期の値の1.5倍 |
丸鋼 | \(\frac{4}{100}F_{c}\) かつ 0.9以下 | \(\frac{6}{100}F_{c}\) かつ 1.35以下 |
*1:上端筋とは、曲げ材にあってその鉄筋下に300mm以上のコンクリートが打ち込まれる場合の水平鉄筋のことをいいます。
*2:異形鉄筋で、鉄筋までのコンクリートかぶり厚さが鉄筋の径の1.5倍未満の場合、許容付着応力度は、表の値に"かぶり厚さ/鉄筋径の1.5倍の値"を乗じた値とする。