新人が知っておくべき建築専門書

建築関係の仕事をする上で参照すべきオーソライズされた書籍や資料について解説します。オーソライズされているとは、国や学会によって公認された内容であるという意味で、仕事をする上で根拠とするべき内容であるということです。例えば、建築確認や適合性判定では、設計内容が法令や学会規準を満たしているかをチェックされます。
また、計算書の根拠にはできませんが、持っておくと便利な書籍も紹介します。

[目次]

法令集・法令本

建築関係の仕事をする上では、建築基準法・建築基準法施行令・建築基準法施行規則といった法令を守らなければなりません。これらの法令が守られていない建築は違法建築となります。仕事では、建築関係の法令をまとめた法令集や法令について解説された法令本を使用します。構造設計の仕事をする上では、構造設計関係の法令を整理・解説した「建築物の構造関係技術基準解説書」が使用されます。

建築物の構造関係技術基準解説書

構造関係の法規についてまとめられた書籍です。カテゴリーごとに法規が整理され、考え方や、なぜそのような規定が定められているのかについて解説されています。構造設計をする上で必須の書籍の一つです。表紙が黄色いので、黄色本と呼ばれています。

日本建築学会が発行した書籍

建築関係法令の次に重要なのが、日本建築学会によって発行された書籍です。規定された内容に関する解説も収録されています。これらの学会本に規定されている内容は、建築関係法令と被っている内容もあり、建築関係法令より学会本の内容の方が値や式が厳しいケースもありますが、建築関係法令を満たしていれば違反にはなりません。建築関係法令に加えて学会本の内容を満たしていれば、より品質の高い設計・施工となります。日本建築学会によって発行された書籍には、設計規準・指針やJASS(建築工事標準仕様書)などがあります。

設計規準・指針

日本建築学会は、構造設計に関する規準・指針を発行しています。構造設計する上で黄色本の次に重要な書籍です。学会規準は法令ではないため、守っていなくても違法にはなりませんが、学会によってオーソライズされた内容なので、基本的には満たすように設計します。RC規準とS規準は英語版も発行されており、構造設計の英語学習に利用できます。

鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説

鉄筋コンクリートの造設計についての規準になります。鉄骨造を担当する場合でも、基礎やスラブは鉄筋コンクリートで造るので、構造設計者にとって必須です。RC規準と呼ばれます。

鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説

日本建築学会が発行するのは、規準の他に指針があります。規準は設計全体における基本的な内容で、指針は設計する対象についてポイントを絞った内容になります。RC規準は計算に関する内容がメインですが、配筋指針は配筋についての考え方だけでなく、各部材・部位の配筋の図が多く掲載されているため、具体的な配筋のビジュアルが確認できます。

鋼構造許容応力度設計規準

鉄骨造の許容応力度設計についての規準になります。S造を設計するのに必須です。S規準と呼ばれます。

鋼構造接合部設計指針

鉄筋コンクリート造の要が配筋だとすれば、鉄骨造の要は接合部と言えるでしょう。いくら部材の耐力が充分でも、接合部が破壊したら意味がありません。継手や柱脚といったS造の接合部は、ボルトやプレートなど構成要素が多く、複雑なため、ビジュアルとともに考え方についても理解する必要があります。

JASS(建築工事標準仕様書・同解説)

JASSとは、日本建築学会が発行している建築工事の標準仕様書です。建築工事の品質向上と合理化を目的としています。JASS5と6は英語版も発行されており、建築工事の英語学習に利用できます。JASSには以下の項目があります。
JASS1 一般共通事項(2002)
JASS2 仮設工事(2006)
JASS3 土工事および山留め工事(2009)
JASS4 杭・地業および基礎工事(2009)
JASS5 鉄筋コンクリート工事(2018)
JASS5N 原子力発電所施設における鉄筋コンクリート工事(2013)
JASS6 鉄骨工事(2018)
JASS7 メーソンリー工事(2009)
JASS8 防水工事(2014)
JASS9 張り石工事(2009)
JASS10 プレキャスト鉄筋コンクリート工事(2013)
JASS11 木工事(2005)
JASS12 屋根工事(2020)
JASS13 金属工事(1998)
JASS14 カーテンウォール工事(2012)
JASS15 左官工事(2019)
JASS16 建具工事(2008)
JASS17 ガラス工事(2003)
JASS18 塗装工事(2013)
JASS19 陶磁器質タイル張り工事(2012)
JASS20 プラスチック工事(1960)
JASS21 ALCパネル工事(2018)
JASS22 雑工事(1960)
JASS23 吹付け工事(2006)
JASS24 断熱工事(2013)
JASS25 ユニット類工事(1994)
JASS26 内装工事(2006)
JASS27 乾式外壁工事(2011)

行政が作成した資料

省庁や都道府県といった行政機関が設計指針や建築工事標準仕様書を作成している場合があります。公共建築を扱う場合には、これらの資料に基づくよう求められることがあります。作成された資料は各々の行政の公式サイトで公開されています。

建築構造ポケットブック

構造計算で用いる計算式や材料の諸量がまとめられたコンパクトなレファレンスブックです。計算書の根拠としては使用しませんが、RC造・S造・木造全ての基本的な情報が網羅されているので、机に置いておくと重宝します。