柱脚の規定
鉄骨柱に溶接したベースプレートをアンカーボルトを介してコンクリート基礎部に定着させることで、上部架構からの力を基礎に伝達させます。
柱脚は、鉄骨部とコンクリート部の異種構造を接合するものであり、力学性状が複雑であるため、慎重に設計する必要があります。平成7年(1995)の兵庫県南部地震では、設計上、施工上の問題による柱脚被害が多数発生し、倒壊に至った例もあります。
柱脚には、露出形式柱脚、根巻き形式柱脚、埋込み形式柱脚の3種類あります。
関連法規:令第66条、平12建告第1456号
[目次]
露出形式柱脚
露出形式柱脚は、柱脚部をコンクリートで覆わない形式です。コンクリートによる固定度を期待しない形式ということになります。スラブに対してベースプレートのレベルを下げることで、柱脚部を見えないようにすることも可能です。兵庫県南部地震において、特に被害が多く見られ、アンカーボルトの破断や基礎コンクリートからの抜け出し等が報告されています。
露出形式柱脚には、以下の仕様規定があります。
露出形式柱脚の設計についてはこちらで解説しています。露出形式柱脚の設計について
[平12建告第1456号]
- アンカーボルトは、柱の中心に対して均等に配置すること。
- アンカーボルトには座金を使用し、ナット部分の溶接やダブルナット、それらと同等以上の効力を有する戻り止めを施すこと。
- アンカーボルトの基礎に対する定着長さは、20d(d:アンカーボルト径)以上とし、先端をかぎ状に折り曲げるか定着金物を設けること。ただし、アンカーボルトの付着力を考慮して、アンカーボルトの抜け出しやコンクリート破壊が生じないことが確かめられた場合においては、この限りではない。
- 鉄骨柱脚部の断面積に対するアンカーボルトの全断面積の割合は、20%以上とすること。
- ベースプレートの厚さは、アンカーボルト径の1.3倍以上とすること。
- アンカーボルト孔径は、アンカーボルト径+5mm以下とし、縁端距離は表の数値以上とすること。
アンカーボルト孔の縁端距離[mm]
アンカーボルト径:d[mm] 縁端距離[mm] せん断・手動ガス切断 圧延・自動ガス切断・
のこ引き・機械仕上げd≦10 18 16 10<d≦12 22 18 12<d≦16 28 22 16<d≦20 34 26 20<d≦22 38 28 22<d≦24 44 32 24<d≦27 49 36 27<d≦30 54 40 30<d 9d/5 4d/3
根巻き形式柱脚
根巻き形式柱脚は、鉄骨柱下部を根巻きコンクリートで覆う形式です。根巻きコンクリートによって固定度が得られ、上部架構の変形を抑えることができます。
鉄骨柱からコンクリート基礎への力の伝達は、曲げモーメントとせん断力は根巻コンクリートの頂部と脚部における支圧により伝達され、圧縮軸力はベースプレートから基礎に伝達されると考えます。
根巻き形式柱脚には、以下の仕様規定があります。
根巻き形式柱脚の設計についてはこちらで解説しています。根巻き形式柱脚の設計について
[平12建告第1456号]
- 根巻きコンクリートの高さは、柱幅(大きい方)の2.5倍以上とすること
- 根巻きコンクリートの主筋は4本以上とし、頂部をかぎ状に折り曲げたものとすること。
また、主筋の定着長さは、表の数値×鉄筋径以上とすること。ただし、主筋の付着力を考慮してこれと同等以上の定着効果を有することが確かめられた場合は、この限りではない。根巻きコンクリート主筋の定着長さ[mm](d:鉄筋径)
定着位置 鉄筋の種類 異形鉄筋 丸 鋼 根巻き部 25d 35d 基礎部 40d 50d - 根巻きコンクリートに令第77条第二号及び第三号に規定する帯筋を配置すること。ただし、令第3章第8節第1款の2に規定する保有水平耐力計算を行った場合においては、この限りではない。
埋込み形式柱脚
埋込み形式柱脚は、鉄骨柱下部を基礎コンクリートに埋込む形式です。鉄骨柱をコンクリートに埋め込むことで固定度が得られます。
鉄骨柱からコンクリート基礎への力の伝達は、曲げモーメントとせん断力はコンクリートに埋め込まれた部分の上部と下部における支圧により伝達され、圧縮軸力はベースプレートから基礎に伝達されると考えます。
埋込み形式柱脚には、以下の仕様規定があります。
埋込み形式柱脚の設計についてはこちらで解説しています。埋込み形式柱脚の設計について
[平12建告第1456号]
- コンクリートへの柱の埋込み深さは、柱幅(大きい方)の2倍以上とすること。
- 側柱や隅柱の柱脚は、径9mm以上のU字形の補強筋かそれに類するものにより補強すること。
- 埋込み部分の鉄骨に対するコンクリートのかぶり厚さは、柱幅(大きい方)以上とすること。