鉄筋コンクリートのかぶり厚さ
鉄筋コンクリートのかぶり厚さとは、鉄筋を覆うコンクリートの厚さのことをいいます。
鉄筋コンクリート部材の付着性能や耐久性、耐火性に大きく関わるため、十分なかぶり厚さを確保することが重要です。
部材の全ての鉄筋で一定以上のかぶり厚さを確保しなければならないため、部材の最も外側の鉄筋のかぶり厚さで見ます。コンクリートの目地も考慮します。
【かぶり厚さの見方】
- 柱・梁
→帯筋やあばら筋からコンクリート表面まで - 杭基礎のベース筋
→ベース筋から杭頭まで(杭に沿って水が杭頭まで上昇するため)
[目次]
設計かぶり厚さ
設計かぶり厚さは、法令で定められている最小かぶり厚さ+10mmとするのが一般的です。
設計かぶり厚さ [mm]
部材の種類 | 設計かぶり厚さ | |
---|---|---|
土に接しない部分 | 壁・床・屋根 | 30 |
耐力壁・柱・梁 | 40 | |
土に接する部分 | 柱・梁・壁・床・布基礎の立上り | 50 |
基礎 | 70 |
最小かぶり厚さ(法令上のかぶり厚さ)
最小かぶり厚さは、建築基準法施行令第79条で規定されています。この数値は必ず守らなければならないため、施工誤差や目地を考慮し、設計かぶり厚さは余裕を持たせた数値とする必要があります。
建築基準法施行令 第79条 鉄筋のかぶり厚さ [mm]
部材の種類 | 最小かぶり厚さ | |
---|---|---|
土に接しない部分 | 壁・床 | 20 |
耐力壁・柱・梁 | 30 | |
土に接する部分 | 柱・梁・壁・床・布基礎の立上り | 40 |
基礎 | 60 |
JASS5の設計かぶり厚さ
JASS5では、計画供用期間の級やコンクリート面が屋内か屋外かによって、かぶり厚さを規定しています。
設計かぶり厚さ[mm](JASS5)
部材の種類 | 短期 | 標準・長期 | 超長期 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
屋内・屋外 | 屋 内 | 屋外*2 | 屋 内 | 屋外*2 | ||
構造部材 | 柱・梁・耐力壁 | 40 | 40 | 50 | 40 | 50 |
床・屋根 | 30 | 30 | 40 | 40 | 50 | |
非構造部材 | 構造部材と同等の耐久性を要求する部材 | 30 | 30 | 40 | 40 | 50 |
計画供用期間中に維持保全を行う部材*1 | 30 | 30 | 40 | (30) | (40) | |
直接土に接する柱・梁・壁・床・布基礎の立上り部分 | 50 | |||||
基礎 | 70 |
*1:計画供用期間の級が超長期で計画供用期間中に維持保全を行う部材では、維持保全の周期に応じて定める。
*2:計画供用期間の級が標準、長期および超長期で、耐久性上有効な仕上げを施す場合は、屋外側では、設計かぶり厚さを10mm減じることができる。
付着性能
かぶり厚さが鉄筋径に対して小さいと、鉄筋に大きな力が作用した際に鉄筋に沿ってコンクリートにひび割れが発生し、付着強度が急激に低下する可能性があります(付着割裂)。特に太径の異形鉄筋で発生しやすいことが知られています。RC規準では、主筋のかぶり厚さが1.5d(d:鉄筋の呼び名)未満の場合、許容付着応力度を低減することとされています。
耐久性
コンクリートは、大気中の二酸化炭素の作用により時間の経過とともに中性化が進行します。中性化が鉄筋位置まで到達すると、鉄筋の腐食による体積膨張作用によりコンクリートに鉄筋に沿ったひび割れが発生します。これにより、コンクリート剥落の危険性や、鉄筋断面の減少による構造性能の低下につながります。計画供用期間の間に中性化が鉄筋位置まで到達しないよう、かぶり厚さを設定する必要があります。
耐火性
鉄筋コンクリート造の建物で火災が発生すると、温度上昇によってコンクリートと鉄筋の強度が低下するため、部材に過大な変形が生じる可能性があります。火災によってコンクリート内部が劣化しないよう、かぶり厚さを設定する必要があります。