コンクリートのひび割れの種類
コンクリートのひび割れは、原因、形状、発生時期、発生部位、構造物の種類等で分類されます。コンクリートのひび割れには、打設後数時間以内に発生する初期ひび割れと硬化後に発生するひび割れがあります。初期ひび割れには、沈下ひび割れと初期収縮ひび割れがあります。硬化後のひび割れには、乾燥収縮ひび割れ、反応性ひび割れ、温度ひび割れ、構造的ひび割れ等があります。
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沈下ひび割れ(沈みひび割れ)
ブリーディングや固体材料の沈降の際、沈降が鉄筋によって妨げられると、鉄筋に沿ったひび割れが生じます。また、打設厚さが異なることで、沈降の程度に差があると、厚さが変化する箇所でひび割れが生じます。
ブリーディング…フレッシュコンクリートにおいて、固体材料の沈降又は分離によって、練混ぜ水の一部が遊離して上昇する現象
初期収縮ひび割れ(プラスティック収縮ひび割れ)
高気温、直射日光、風等によりコンクリート表面の水分が蒸発し、初期収縮が促進されると、初期収縮ひび割れが生じます。初期収縮ひび割れは、長さ数cm~1m程度の不規則な細かいひび割れ、あるいは亀の甲状のひび割れとなります。
乾燥収縮ひび割れ
乾燥収縮ひび割れは、乾燥によってコンクリート内の水分が散逸し収縮した際、何かしらの原因によって拘束され、コンクリートに引張応力が発生することで生じるひび割れになります。拘束の形態によって、ひび割れ発生の部位、形状、長さ等が異なります。
1. 建築物では壁、スラブ、土木構造物では擁壁、橋梁、舗装スラブでひび割れが生じやすいです。
2. 建築物の外壁については、窓などの開口部隅を起点として、壁全体として逆八字形にひび割れが発生します。
3. 開口部のない一面の壁については、柱や梁の拘束によって、中央部の鉛直のひび割れや、柱に沿ったひび割れが発生します。
4. 開口部のある一面の壁については、開口部四隅から放射状のひび割れが発生します。開口がスパン全体にわたる場合は、鉛直のひび割れが発生します。
5. スラブについては、拘束が小さい場合は、長手方向に直角のひび割れが発生します。拘束が大きい場合は、中央部では長手方向に直角のひび割れ、隅部では斜め方向のひび割れが発生します。
反応性ひび割れ
反応性ひび割れとは、鉄筋コンクリート材料の化学的な反応が原因で生じるひび割れのことをいいます。
1. アルカリシリカ反応が起きると、生成物が吸水することで体積が増加し、膨張ひび割れが生じます。アルカリシリカ反応によるひび割れは、該当する材料を使用した箇所全体にわたる格子状、網目状のひび割れとなります。
2. コンクリート内の鉄筋の腐食が進むと、錆の膨張によって鉄筋に沿ったひび割れが生じます。
3. コンクリートの中性化による収縮や硫酸塩等の浸食による膨張もひび割れの原因となります。
膨張を伴う化学反応の場合、ポップアウト(コンクリート表面が円錐状に剥離する現象)が生じることもあります。
温度ひび割れ
温度ひび割れとは、コンクリートの温度応力・温度変形によって生じるひび割れのことをいいます。コンクリートの表面と内部の温度差によるひび割れは、内部温度が高くなる材齢初期に発生しやすく、コンクリート表面のひび割れとなりやすいです(内部拘束によるひび割れ)。コンクリート部材の温度変形が隣接する部材や地盤等に拘束されることによるひび割れは、収縮が進むある程度材齢が経過した時に発生しやすく、断面を貫通するひび割れとなりやすいです(外部拘束によるひび割れ)。マスコンクリートにおいては、温度ひび割れの検討が最も重要となります。
マスコンクリート…部材・構造物の寸法が大きく、セメントの水和熱による温度上昇の影響が大きいコンクリート
構造的ひび割れ
構造的ひび割れとは、荷重や外力による引張応力によって生じるひび割れのことをいいます。曲げひび割れは、曲げモーメントによって、部材引張側において部材軸方向と垂直に発生します。せん断ひび割れは、せん断力によって、部材の斜め方向に発生します。
ひび割れの処置
初期ひび割れについては、コンクリートがプラスティックな状態であれば、タンピング、再振動、再仕上げによって補修します。
硬化後のひび割れについては、適当な材料によるシールや充填を行って補修します。