コンクリートの養生

コンクリートの養生とは、打込み直後の一定期間、コンクリートを適当な温度と湿度に保ち、振動・外力等から保護することです。
コンクリートが硬化後に所要の強度、耐久性、水密性等の性能を発揮するには、十分な養生を施す必要があります。
コンクリートの養生はできるだけ長期にわたって行うことが望ましいですが、特に初期材齢の養生はコンクリートの品質に与える影響が大きいため重要になります。

[目次]

材齢

材齢とは、コンクリート打込みから経過した日数のことです。例えば、打込んだ次の日が材齢1日となります。
コンクリートは、打込んでから強度発現するまで日数がかかるため、材齢で管理し、材齢に応じて適当な養生を施す必要があります。

湿潤養生

コンクリート硬化初期に十分な水分がないと、セメントの水和反応に必要な水分が不足し、コンクリートの強度発現に支障をきたします。そのため、以下の方法によってコンクリートを湿潤状態に保たなければなりません。

【湿潤養生の方法】

  1. 透水性の小さいせき板で被覆し、水分を維持する
  2. 養生マットや水密シートで被覆し、水分を維持する
  3. 連続的または断続的に散水または噴霧を行い、水分を供給する
  4. 膜養生剤や浸透性の養生剤の塗布により、水分の散逸を防ぐ

湿潤養生の期間は、JASS5やコンクリート標準示方書で以下のように規定されています。

湿潤養生の期間(JASS5)

計画供用期間の級短期
標準
長期
超長期
早強ポルトランドセメント3日以上5日以上
普通ポルトランドセメント5日以上7日以上
中庸熱・低熱ポルトランドセメント
高炉セメントB種
フライアッシュセメントB種
7日以上10日以上

※普通ポルトランドセメントを用いる水密コンクリートについては、湿潤養生期間は上表の期間に2日加えた日数とします。

養生期間の標準(コンクリート標準示方書)

日平均気温普通ポルトランドセメント混合セメントB種早強ポルトランドセメント
15℃以上5日7日3日
10℃以上7日9日4日
5℃以上9日12日5日

湿潤養生期間の終了前であっても、コンクリート厚が18cm以上の部材については、供試体の圧縮強度が以下の表の値以上になったことを確認すれば、湿潤養生を打ち切ることができます。この場合の供試体の養生は、現場水中養生または現場封かん養生としなければなりません。標準養生とすることはできません。

湿潤養生を打ち切ることができるコンクリート圧縮強度 [N/㎟](JASS5)

計画供用期間の級短期
標準
長期
超長期
早強ポルトランドセメント
普通ポルトランドセメント
中庸熱ポルトランドセメント
10以上15以上

養生温度

コンクリートは、養生期間の温度が低すぎると、強度発現が著しく遅れます。また、養生期間の温度が高すぎると、温度ひび割れが生じたり、長期材齢における強度増進が小さくなったり、温度応力の悪影響を受けることがあります。急激な温度変化もコンクリートに悪影響を与えます。
外気温が低い時期においては、材齢5日以上、コンクリートの温度を2℃以上に保つ必要があります。早強ポルトランドセメントを用いる場合は、材齢3日以上とすることができます。
セメントの水和熱によって、打込んだコンクリートの中心部の温度が外気温より25℃以上高くなる恐れがある場合は、散水して冷却するなどの養生をします。

振動・外力からの保護

硬化が十分に進んでいないコンクリートに振動や外力が作用すると、コンクリートにひび割れが発生する恐れが極めて大きいです。
コンクリート打込み中と材齢5日以上、振動、衝撃、荷重等によってコンクリートの凝結・硬化が妨げられないように養生しなければなりません。
また、少なくとも材齢1日は、コンクリート上を歩行したり、作業してはいけません。

コンクリート露出面の保護

若材齢時のコンクリートは、酸や塩化物の侵入に対する抵抗性が十分でなく、コンクリート表面が直射日光や急激な乾燥にさらされると、表面ひび割れが発生し、耐久性を損なう可能性があるため、コンクリート表面を保護する必要があります。
また、材齢5日以上、海水等が触れないように保護しなければなりません。

供試体の養生方法

コンクリート供試体の養生方法には、標準養生、現場水中養生、現場封かん養生があります。
湿潤養生打切りを決定する圧縮強度試験の供試体では、現場水中養生または現場封かん養生とします。
標準養生とは、供試体を20±3℃に保った水中、湿砂中、飽和湿気中で保存する養生です。
現場水中養生とは、供試体を水中に沈める養生です。
現場封かん養生とは、供試体を容器に入れ密封するなどして、表面からの水分の出入りが起きない状態とする養生です。