コンクリートの耐凍害性

コンクリートの耐凍害性とは、コンクリート中の水分が凍結融解を繰り返した際のコンクリートの耐久性のことです。耐凍害性を向上させるには、良質な材料を使用し、適切な水セメント比としたAEコンクリートとすることが有効です。

[目次]

耐凍害性の傾向

コンクリートの耐凍害性には、以下のような傾向があります。

1. エントレインドエアは、内部水の凍結による圧力に対する緩衝となるため、耐凍害性を向上させる。
2. 気泡間隙係数が大きいと、空気の分散性が悪いため、凍害が発生しやすくなります。
3. 水セメント比が大きいと、凍害が発生しやすくなります。
4. 吸水率、透水係数、膨張係数の大きい骨材が使用されていると、骨材自身の劣化が引き金となり、凍害が発生しやすくなります。このとき、ポップアウトが生じることがあります。
5. コンクリートが湿潤状態に置かれたり、ひび割れ等の欠陥があると、水分の浸透が進むため、凍害に対しても不利となる。

エントレインドエア…AE剤又は空気連行作用がある混和剤を用いてコンクリート中に連行させた独立した微細な空気泡
気泡間隙係数…コンクリート中の空気泡の平均間隔を示す係数であり、値が小さいほど空気泡の分散性が良い

耐凍害性の評価

JASS5では、空気量の下限値が4%以上のAEコンクリートとし、300サイクルにおける相対動弾性係数(凍結融解繰り返し後の動弾性係数と試験前の動弾性係数との比)は85%以上とするよう規定されています。また、凍結融解係数(=最低気温×日射係数×部材係数)に基づいた凍害危険度が地域別に提案されています。

コンクリート標準示方書では、耐凍害性の評価は、内部損傷の照査と、表面損傷(スケーリング)の照査を行うよう規定されています。一般の構造物においては、凍結融解試験における相対動弾性係数の特性値\(E_{k}\)が90%以上の場合や、凍結防止剤や海水の影響を受ける場所のコンクリートで水セメント比が45%以下で空気量が6%以上である場合は、凍害に対する照査を行う必要はありません。

内部損傷に対する照査は、コンクリート内部の劣化を判定するものです。凍結融解試験(凍結融解を繰り返した供試体を測定する試験)における相対動弾性係数の最小限界値\(E_{min}\)とその設計値\(E_{d}\)との比に構造物係数\(\gamma_{i}\)を乗じた値が1.0以下であることを確認します。

\[\gamma_{i}\frac{E_{min}}{E_{d}}{\leqq}1.0\] \[E_{d}=E_{k}/\gamma_{c}\]
\(\gamma_{i}\):構造物係数(一般的に1.0~1.1とします。)
\(E_{d}\):凍結融解試験における相対動弾性係数の設計値
\(E_{k}\):凍結融解試験における相対動弾性係数の特性値(空気量が4~7%の普通コンクリートについては、以下の表を用いることができます。)
\(\gamma_{c}\):コンクリートの材料係数(一般的に1.0とし、上面の部位では1.3とします。)
\(E_{min}\):凍結融解試験における相対動弾性係数の最小限界値(値は以下の表になります。)

凍結融解試験における相対動弾性係数の特性値 \(E_{k}\)[%]

水セメント比[%]65605545
凍結融解試験における相対動弾性係数60708590

※表の間の値は直線補間して求めます。水セメント比が45%以下の場合の値は90%とします。

凍結融解試験における相対動弾性係数の最小限界値 \(E_{min}\)[%]

気象条件凍結融解が繰り返される気温が氷点下になることがまれ
断面薄い*2一 般薄い*2一 般
連続的か断続的に水に飽和される*185708560
普通の露出状態70607060

*1:水路、水槽、擁壁、橋脚、橋台、トンネル覆工等で水面に近く水で飽和される部分や、床版、桁等で水面から離れているが融雪、流水、水しぶき等により水で飽和される部分

*2:断面厚さ20cm以下の部分

表面損傷(スケーリング)に対する照査は、コンクリート表面の劣化を判定するものです。コンクリートのスケーリング量の設計値\(d_{d}\)とその限界値\(d_{lim}\)との比に構造物係数\(\gamma_{i}\)を乗じた値が1.0以下であることを確認します。

\[\gamma_{i}\frac{d_{d}}{d_{lim}}{\leqq}1.0\]
\(\gamma_{i}\):構造物係数(一般的に1.0~1.1とします。)
\(d_{lim}\):コンクリートのスケーリング量の限界値[g/㎡]
\(d_{d}\):コンクリートのスケーリング量の設計値[g/㎡]