コンクリートの中性化

コンクリートの中性化とは、時間の経過とともに、空気中の二酸化炭素の接触・浸透により、セメントの水和物である水酸化カルシウムが炭酸カルシウムに変化(炭酸化)し、コンクリートがアルカリ性を失っていく現象です。中性化が進行すると、構造物の強度・耐久性の低下を引き起こすため、対策・検査が重要となります。

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中性化の問題

コンクリートの中性化が進行し、鉄筋位置に達すると、鉄筋の腐食が発生します。鉄筋が腐食すると、鉄筋の有効断面積が減少するため、構造部材としての耐力が低下してしまいます。さらに、錆の発生によって体積膨張し、コンクリートのひび割れを誘発するため、コンクリートの耐久性の低下にもつながります。
コンクリートのひび割れについてはこちらで解説しています。ひび割れについて
また、コンクリートの炭酸化過程の収縮によるひび割れも発生します。炭酸カルシウムが表面に析出したものをエフロレッセンスといいます。

エフロレッセンス…硬化したコンクリートの内部からひび割れなどを通じて表面に析出した白色の物質

中性化の傾向

中性化の発生しやすい箇所や進行速度は、原因物質である二酸化炭素のコンクリート中への浸透しやすさに基づき、以下の傾向があります。
1. 中性化が進行しやすい箇所は、コンクリート表面、骨材や水平鉄筋の下側、打継目である
2. 屋外側より屋内側の方が二酸化炭素濃度が高いため、中性化が進行しやすい
3. 温度が高いほど、乾燥状態であるほど、中性化が進行しやすい
4. 中性化速度は、組織が密実でないコンクリート(水セメント比が大きい、圧縮強度が小さい)ほど速い
5. 混合セメントは、水和によるアルカリ性が普通ポルトランドセメントと比べて低くなるため、中性化が進行しやすいと考えられる

中性化の測定

中性化の程度は、中性化深さを測定することで判断します(JIS A 1152)。中性化深さとは、コンクリートコアの断面にフェノールフタレイン1%エタノール溶液を噴霧して赤紫色に変化しない部分の厚さです(フェノールフタレイン溶液はアルカリ性で赤紫色に変化します)。中性化深さは、測定面における各測定値、平均値(各測定値の平均、プラニメータ等を利用して中性化部分の面積から求めた平均)、最大値を表示します。

中性化深さは、概ね経過時間の平方根に比例することが知られています。

鉄筋の腐食要因

鉄筋は、不動態被膜(水酸化第一鉄)が破壊されることで、腐食が発生します。鉄筋の腐食要因は以下になります。
1. 乾湿の影響を受けやすい環境
2. コンクリートの水分、酸素、塩化物イオン等の浸透しやすさ
3. 混和剤等の使用材料に腐食を助長する成分が含まれいるかどうか
4. 水平方向の鉄筋は、下面に水膜や空隙が形成されやすいため、鉛直方向の鉄筋に比べて腐食しやすい

コンクリート中の塩化物イオン量は、荷卸し時点で0.30kg/㎥以下と定められています(JIS A 5308)。コンクリート中の塩化物イオン量は、フレッシュコンクリート中の水の塩化物イオン濃度と、配合設計に用いた単位水量の積として算出します。
塩化物イオンの拡散係数は、組織が密実でないコンクリート(水セメント比が大きい、圧縮強度が小さい)ほど大きくなります。
海洋コンクリートの場合は、海水中の塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等によって腐食が促進されます。