根巻き形式柱脚

根巻き形式柱脚は、鉄骨柱下部を根巻コンクリートで覆う形式です。根巻コンクリートによる柱脚の固定度が大きいため、固定柱脚とすることができます。しかし、鉄骨と鉄筋コンクリートの異種構造となるため、応力伝達メカニズムは複雑になります。鉄骨柱から根巻コンクリートへの力の伝達を考慮して、根巻コンクリート部と鉄骨部の設計を行う必要があります。柱の脚部がかなり大きくなるため、工場や倉庫などの建築物で多用されます。
根巻き形式柱脚の仕様規定についてはこちらで解説しています。根巻き形式柱脚の仕様規定について

[目次]

応力伝達メカニズム

鉄骨柱と根巻コンクリートとの間の力の伝達は以下の2通りの考え方があります。

  1. 根巻の頂部や脚部での支圧によって伝達する。
  2. 鉄骨柱のスタッドによって伝達する。

1は、スタッドは引き抜き力に対する抵抗としては機能するが、曲げモーメントの伝達には寄与しないという考え方になります。いずれの考え方でも、根巻頂部に力が集中するため、頂部の補強が重要になります。圧縮軸力については、ベースプレートから直接基礎へ伝達されると考えることができます。以上より、鉄骨柱から根巻コンクリートへの応力伝達は頂部筋位置で行われるとし、根巻コンクリートは片持梁の鉄筋コンクリートとして設計します。
終局曲げ耐力の計算式は以下の式のうち小さい方の値をとります。

\[M_{u1}=M_{pc}/{\left(1-\frac{_rl}{l}\right)}\] \[M_{u2}=0.9\cdot{_ra_t}\cdot{_r\sigma_y}\cdot{_rd}\]
\(M_{u1}\):最上部帯筋位置の曲げモーメント(\(_sM\))が、鉄骨柱の全塑性曲げモーメント\(M_{pc}\)(軸力考慮)に達した状態の、根巻部ベースプレート下面位置の曲げモーメント\(\mathrm{[N{\cdot}mm]}\)
\(M_{u2}\):根巻鉄筋コンクリート部の曲げ降伏により決まる終局曲げ耐力\(\mathrm{[N{\cdot}mm]}\)
\(_rl\):ベースプレート下面から根巻鉄筋コンクリートの最上部帯筋までの距離\(\mathrm{[mm]}\)
\(l\):ベースプレート下面から柱の反曲点までの距離\(\mathrm{[mm]}\)
\(_ra_t\):引張主筋の断面積\(\mathrm{[mm^{2}]}\)
\(_r\sigma_y\):主筋の材料強度\(\mathrm{[N/mm^{2}]}\)
\(_rd\):圧縮縁から引張鉄筋重心までの距離\(\mathrm{[mm]}\)

破壊モード

根巻き形式柱脚の代表的な破壊モードは以下になります。1~3の破壊は耐力低下が急激で、塑性変形性能が低いため、設計的配慮が必要になります。1~4のいずれのモードも、根巻き高さを大きくとり、根巻きコンクリートに作用するせん断力を小さくし、主筋の定着力を大きくすることが耐力の向上に有効です。

  1. 鉄骨柱からの支圧力による根巻コンクリート頂部の圧壊
    →トップフープを二重巻きにする。
  2. 根巻コンクリートのせん断力による斜めひび割れ
    →せん断補強筋間隔を100mm程度とする。
  3. 主筋定着部の破壊
    →主筋の定着長さとかぶり厚さを十分確保する。
  4. 主筋の曲げ降伏

根巻コンクリート部の設計

一般的に根巻コンクリート部分の曲げ降伏先行となるように設計します。そのためには、根巻高さは鉄骨柱径の2.5~3倍とする必要があるといわれています。特に広幅H形鋼や角形鋼管といった耐力の大きい柱の場合は、柱径の3倍とします。

鉄骨部の設計

根巻頂部での局部変形を防止するため、コンクリート充填やダイヤフラムによる補剛を行います。また、引き抜きが発生する場合は、スタッドを設けます。